珍しく家の電話の留守番電話のランプがピカピカと光っていた。



家の電話はほぼ使うことがなくて、留守電が入っているなんて滅多にない。





誰だろうと思いながら、再生ボタンを押し、冷蔵庫からお茶を出してコップに注いだ。





ガタン……



体の力が抜けるような感覚。






私はテーブルの上に、力なくコップを置いた。


中のお茶がこぼれてしまったような気がした。




気付くと、床にしゃがみこんでいた。





遠くから聞こえる声。




笑い声。


楽しそうな声。


その向こうに見えるたくさんの女の人の笑顔。



私の知らない世界。

私には近付くことにできない世界。




私の知らない先生。







1分ほどの留守番電話の再生が終わる前に、私は家を飛び出していた。




鍵だけはちゃんと閉めたのに……


携帯電話を持っていないことに気付いたのは、家からずいぶん遠くに来てからだった。