直が俺を見なくなって、俺はそんな直を見るのが辛かった。



直は元気に笑っていた。



それが嬉しいはずなのに、胸が痛くて……




直が本当に好きなんだな、俺。


この校舎には思い出がいっぱいだ。




教官室へ向かう廊下。


ここで直の頭をポンってしたっけな。


この階段で直と目が合ったっけ。


教官室で、こっそり直の手を握ったな。


ここで、ホワイトデーの日に白いジャージを渡したんだ。


やり直そうって言いたくて、でも言えない俺を残して、直は走り去った。




そんなことを思い出してばかりいた。





「新垣先生、その指輪ってもしかして……」



教官室で机を移動させていると、後ろから金森が俺の手を掴んできた。





「おう。つい最近だけど、結婚したんだよ」




どうか冷静に受け止めて。


泣いたり騒いだりしないで。



俺には泣かせたくない大事な人がいるから。