よし、もう考えないようにしよう。


足早に歩く。




真っ暗な部屋に入り、電気をつける。




1ヶ月経っても、まだ慣れない。


やっぱり真っ暗な家に帰るって寂しい。




今まではずっとお母さんがいたから。





明るい玄関。

チャイムを鳴らすと、お母さんが玄関まで出てきてくれて、『おかえり』って言ってくれる。


『今日、どうだった?』って聞いてくれて。


食卓にはご飯が並んでいて、テレビから笑い声が聞こえる。




今は、私がお母さんの役目をしなくちゃいけない。


先生が帰ってきた時に、安心してもらえるように……


それが幸せなのに、時々寂しくなる。





当たり前だと思っていたお母さんの『おかえり』って声が、時々聞きたくて仕方がなくなる。





「あれ?」



何これ。



部屋の電気をつけて、手を洗った後……


鏡の前に映った私は、泣いていた。



頬に涙が……