涙が出た。



数分間の間、私は勝手にいろんな妄想をしていて、お父さんが死んでしまったんじゃないかって思った。




「直、お母さんからだ」




受話器を私に渡した先生。




「もしもし、お母さん!!!」



『直?せっかくの旅行なのに心配させてごめんね。あのね、あのね』




お母さんも興奮しているようで、なかなか内容が伝わらない。




『直、お財布ある?』



お母さんにそう聞かれると同時に、鞄の中から先生が財布を持ってきてくれた。



「ある。どうしたの?」



『今、怪しい人から電話があってね』




頭の中が真っ白になった。



どうやら大事件が起きているようなんだけど、お父さんとお母さんが無事だったことがわかって安心している自分もいて……