その手を握ることを、どれだけの時間待ったことだろう。
 数え切れないほどの夜を越えて、待ちわびて、待ち焦がれていた叔父の手。

 それが今、私の目の前にある。
  

 ―――いや、ちがう。

 握れるなんて、ましてや差し出されるなんて、想像していなかった。

 理想を描くだけ、無駄だとわかっていたから。


 叔父と私では、結ばれることなど許されない。

 彼の隣に並ぶことなど夢のまた夢。


 そう、常にどこかで思ってた。

 いつも心の奥底には無理の二文字がこびりついて離れなかった。


 諦めていた、叶わぬ未来だと。


 手を伸ばせばすぐに届くこの距離。
 差し出されて、今ごろになって不安を覚える自分がいた。


 私は今、この叔父の手を握って、それで彼を幸せに出来るのか。


 後悔させることはないだろうか。


 考えれば考えるほど深みにはまりそうになる。

 だけど。

 
 それでも、


 私は、

 私はやっぱり、叔父さんの一番近くにいたい……―――!



 一花は思い切って叔父の手を握った。
 ぎゅっと目をつぶる。

 握りかえされた瞬間、叔父の握力を肌に感じた瞬間、それまで感じていた不安や負の感情が嘘のように吹き飛んだ。



 一花の顔に自然、笑顔が咲いた。



「―――……うん!」