まだ気づかぬ真昼を、ケンがのぞきこんだ。

「可愛い顔して寝ちゃってる。」

その時、黒豹からもとの姿に戻った裸の男が、興味深々で真昼に近づこうとした。

「コラッ!
誰が近づいていいと言った!」

ケンの怒声に怯え、男はどこかへ消えた。

「さて……どうしますかね。」

色白で黒く長い睫、小さめの作りの鼻に、花びらのようなピンクの唇。

「結構可愛いじゃん。」

ケンは無防備な真昼を抱き上げて、二階の景色のいい部屋に連れて行き寝かせた。

午後三時、真昼が目覚めた。

「うぅん……。
ここはどこ?
あたし……。」

真昼は起き上がると、緑の絨毯に足を降ろした。

そこへケンが入ってきた。

「やあ、目が覚めた?
餓鬼はもう君の体にいないぜ。」

真昼はお腹を触ってみた。

「ほんとだわ。
いったいどうやったの?」

「それは教えられない。」

「何よ!ケチね!」

真昼は怒ってむくれた。

「まあいいわ!
じゃあさよなら!」

真昼は靴を履き、歩き出し数歩歩いた所で、ふと足をとめた。

「……まさかあなた……。」

「何だい?」

「私に変な事しなかったでしょうね!」

「してないよ。
こう見えても俺は紳士だし、女になんか困ってないのでね!」

「まあ!失礼しちゃうわね!」

「まさか君……。」

「何が言いたいのよ!」

「処女……?」

パチーーン!!

派手な音が鳴った。

「イタタ……図星かよ。」

真昼は怒って出ていった。