「悪いけど持っていないわ。」

私は冷たく言うと、女は、

「ちっ!」

と舌打ちした。

白い肌に紅が赤い。

気にせずどんどん橋を過ぎてやがて曲がり角を曲がった。

どうやら気配は消えたようだ。

この世にはいくつものあの世との出入り口があり、私こと真昼は度々出くわす事なので特に気にもとめず、深く考える事もなく、すぐに忘れる事にしている。

真昼は時々そのあの世の入り口とやらに、好奇心で出入りするうちに、この世とあの世は実に身近に繋がっていて、コツさえつかんだら自由に行き来するすべも知っていた。