執事とお嬢様、それから私



「あーーーーーーっ!!!!」

またしばらく歩いているとあやなが突然声を上げ俺の手を振りほどき走り出した。


「まさとーーーーっ!!!!!!!!」


あやなの先には俺よりはずいぶん年上そうな、でも若い男。

まさと、と呼ばれた男はあやなを目で確認すると走り出しその大きな体にあやなを包んだ。


「うぁーーん!!!!」

あやなの泣き声がこちらまで聞こえてくる。

初めてみる子供っぽさに、胸がチクリと痛んだ。


どうしたものかと思ったが、男が俺を見るから。仕方なく、歩みを進める。


「貴方、は?」


警戒と僅かな戸惑いが浮かぶ声。


「迷子をお届けにきましたー」

「お嬢様?」

ひっついているあやなを優しく離し、顔を覗く男。

「どうしてもって、ヒック、ゆーから、ヒクッ、つ、一緒に連れてきて差し上げだの、ウッ」

「…」


男は俺の顔をみて少し何かを考えたあとありがとうございました、と深く頭を下げた。地面に頭がつきそうな程に。