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「…そうか。 詩織さんと君の間に、そんなことがあったんだね」
「はい…」
学園長に全てのことを話し終えたとき、緊張などとっくに忘れていたはずなのにやけに胸がざわついていた。
きちんと伝わるようにと思って鮮明に思い出した過去は、決して楽なことばかりじゃない。
ピアノが弾けなくて悲しかった気持ちも。
久しぶりに弾いたときの高揚感も。
今だって、ついさっきの出来事のように思い出すことが出来た。
だからこそ悲しい記憶はやけに辛く感じられて、不思議な感情が入り乱れていた。
……だから。
「詩織さんも辛かっただろうが……佐奈さんも辛い思いをしただろう」
何気ないつもりで言った学園長の言葉でさえもゆっくりと心に染みてきて、思わず涙を溢しそうになった。
「……っ」
だけどその姿が露になる前に、唇を強く噛み締めた。
……あたしは、泣くためにここに来たんじゃない。
――ここを目指したくて、歩んできたんだ。



