「実はずっと、こんなことが起こるのではないかと心配していたんだよ。
彼女はあの時、相当ショックを受けていたからね…。
もしかしたらもう、ピアノにどんな形でも関わろうとしないのではないかと思ったんだ。
彼女にとって全てだったピアノが、トラウマになってしまったからね」
学園長の顔に影がかかる。
あたしもお母さんが全てを話してくれたときの表情を思い出すと、おのずと俯いていた。
「…だけど君、さっき『久しぶりに弾いた』と言っていたよね? 詩織さんは、反対しているのではなかったのか?」
言葉の端々の細かいところを見抜いてくる学園長の言葉を聞いていると、きっとこの人に嘘は通じないんだろうなって思える。
あたしが嘘をつく必要も、ないのだけれど。
一つ一つ質問をされて答えていくことは時間がかかると思ったあたしは、何一つ包み隠さずに話すことにした。
お母さんにピアノを反対された頃から、今日この学園に来た経緯もすべて。



