「だが……少し違和感を感じた。 もしかして最近、ピアノに触れていなかったのかな?」
「……っ!!」
食い入るように見詰めていた学園長の口元から飛び出した言葉は、まるであたしの事情を全て知っている上で言っているようなものだった。
だけど、そんなことは絶対に有り得るわけがない。
だったらこの人は……
――演奏だけで見破ったの?
まさか、そこまでは見破られないと思っていた。
だって鈴木先生もみんなも、あたしが久しぶりにピアノを弾いたことに気付きもしなかった。
だから意外とこういうことって、気付かないものなんだと思っていた。
だけど、この人は違っていた。
さすが、東條学園の学園長を務めるだけのことはある。
知識も、耳や目も。
この学園の名に劣らないほど、しっかりと持っている人だ。
見破られて戸惑っているはずなのに、不思議と焦る気持ちはもうなかった。
目の前にいる人の凄さが身に染みて、心拍数は徐々に上がっていった。



