光を背負う、僕ら。―第1楽章―




「…君のお母さんは本当に、ピアノの才能がある人だよ。 ただ……事故に遭ってしまったのが残念だ」



「…学園長も、事故のことをご存じなんですね」




聞いておいて、それは当り前かと思った。



だって事故があった当時はかなりマスコミに騒がれていたし、きっと学園長もそのことは人づてに聞いているだろうから。




「あぁ、もちろん知っている。 見舞いも兼ねて自宅の方にも訪ねたことがあるよ」



「え…」




まさか自宅にまで来ていたとは思っていなくて、驚きの声が思わず漏れる。



でもそれだって、冷静に考えればありえることだ。



学園長はお母さんのリサイタルにも行ったことがあると言っていたし、あたしの家族の写真を持っているほどの交友関係なのだから。



だけど学園長が来たという事実は、あたしは全く覚えていない。




「お見舞いに行ったとき、詩織さんには会えたけどまともな話は出来なかった。 あの時には彼女、もうピアニストの人生を完全に諦めていたから」



「………」




学園長の言葉で、自分がお母さんから聞いた言葉を思い出す。



事故のことを辛そうに話す表情と、事実を証明するために聞かされたピアノの音とともに。