学園長はさっそく谷口さんが用意してくれたアイスコーヒーを飲んでいた。
上品にだけどとても美味しそうに飲む姿は、こっちの気持ちまで掻きたてるものだった。
あたしはそんな気持ちに突き動かされるままに、グラスと一緒に持ってきてもらったミルクをアイスコーヒーの中に入れる。
それをストローでかき混ぜると、カランカランと氷が音を立てた。
そして動作を休むことなくストローで少しずつコーヒーを口に含むと、気分が落ち着いていくような気がした。
「…さて、何から話をしたらいいだろうか」
グラスをテーブルに置いてゆっくりと口を開く学園長を見て、そろそろだと実感する。
あたしも学園長と同じように、テーブルにほとんど中身が無くなってしまったグラスを置く。
液体よりも量が多くなった氷が、またカランと音を立てた。
「君に話をしようと持ちかけたのは私だが……正直困ってるんだ。 君と何の話をしたいのか具体的に考えていなかったからね、君を誘ったときは」
「………」
「でも、君をここに誘ったのは私だ。 君に失礼のないように、ちゃんと話題を出すつもりだよ」
少し前屈みの体勢で悩んでいるように見える学園長の顔は、決して平気な風には見えなかった。
落ち着いた雰囲気はある。
でもそれは、ただの大人の見栄のようで。
笑顔を見せないところと見ると、相当緊張しているんじゃないかと思った。
…なんだ。
あたしばかりが緊張しているわけじゃないんだ。
それが分かると、なんだか自然に笑顔を作ることが出来た。



