光を背負う、僕ら。―第1楽章―




そういえばあたし、よくよく考えると何も知らないんだな。



学園内部のことも。
学園長のことも。




「………」




お母さんが通っていたこの東條学園。



来てみたらきっと自然に知ることが出来るって……。



少し、自惚れていたような気がする。




だって、体験入学の説明の中で知ることが出来る情報は限られている。



それだけじゃ、お母さんが見てきた世界を知った、と言えるには程遠い。




それに、学園長のこともそう。



お母さんだけじゃなくてあたしとも面識があったらしいけど、あたしはそのことさえ知らなかった。




「……」




自然と膝の上に置いていた手に力がこもった。




――近づけたと思っていた場所は、思っていたよりも遠いのかもしれない。





「飲み物、お持ちしました」



「あぁ、ありがとう」




声がして顔を上げると、ちょうど谷口さんがグラスを目の前に置いてくれている最中だった。




「あ、ありがとうございます」



「いえ」




短く、はっきりとそれだけ言って、谷口さんは学園長の前にも音を立てずにグラスを置いた。



そして一礼すると、また奥の部屋へと歩いていった。