そういえば。
さっきこの学園長室に招かれた時も、学園長はあたしに有無を言わせない状況にしていたんだっけ…。
そのことを思い出した今、もう何を言っても断ることが出来ない気がした。
「…じゃあ、アイスコーヒーでお願いします」
「ミルクと砂糖は?」
「ミルクでお願いします」
「分かった。 ……おい、谷口君」
「はい、何でしょう」
「……!!」
一体、いつからこの部屋にいたのだろうか。
学園長が“谷口君”と呼ぶと、風のように現れてさっと学園長の隣に立った男の人。
背広姿の彼は、しゃんと背筋を伸ばして学園長の言葉を待っていた。
「アイスコーヒーを二つ用意してもらえるか? 一つはミルクをつけてな」
「かしこまりました」
谷口さんは淡々とした口調でそう一言だけ口にすると、さっさと歩いて部屋の奥へ消えていく。
そしてその奥にある扉を開けて、こことは違う別の部屋へと移動していった。



