そのことに気付いているのか、それとも気付かない振りをしているのか。
そのどちらなのか確信が持てないまま、ただじっと学園長の言葉に耳を傾ける。
「佐奈さん、喉は渇いていないか? 飲み物を用意させようと思うのだが、君は何が飲みたい?」
「えっ、いや。 飲み物なんて、結構ですよ」
本当は、とっくの前から喉が渇いていたけれど。
この場で気軽に飲み物を貰うなんていう考えは、あたしには到底有り得ないものだった。
「そんな遠慮はしなくてもいいのだよ。 何せ、夏に水分補給は欠かせないのだから」
「いや、まぁ……それはそうですけど」
「アイスコーヒーとアイスティー、どちらがいいかい? あっ、お茶がよければ麦茶も用意出来る。 それ以外が飲みたいならば、用意出来ないこともない」
「………」
遠慮するあたしなどお構い無しに飲み物の説明をしていく学園長。
その流れにあたしは逆らうことが出来ず、しまいには返す言葉さえ失ってしまった。



