「…あたしも」
「ん?」
「…あたしも、その雰囲気分かります」
自然と口から、言葉が出てきていた。
“あたしも知ってるよ”
同じ“笹川詩織”を知っている先生と気持ちを共有したくて。
うずうずする心がそう叫んでいるからこそ、言葉が自然と出てきたように思えた。
先生はまるであたしの気持ちを見透かしたように、頬を緩めていた。
「…不思議よね。
言葉では上手く説明出来ないのに、何故か他の人とは違うって断言出来るの。
私は初めて笹川さんの演奏を聞いた時から、そんな違う部分に惹かれていた」
先生は止めた足を、再び前へ向いて動かし始める。
あたしもその隣りを、先生のスピードに合わせて歩き出す。
廊下は凄く長くて。
ただ歩いているだけなら直ぐに飽きてきてしまうだろう。
だけど今は、全然苦になんか感じられない。
むしろ、廊下が無駄に長くて良かったって思えた。
だってこうやって先生と、長い間話を出来る時間が出来たのだから。



