さっきまでとは違い、並んで歩く二人の間にあった微妙な間隔はなくなっていた。
それだけ先生とも心の距離が縮んだのかと思うと、一緒に過ごす時間がものすごく特別なものに感じられる。
さっきまでの会話があたし達にもたらしたもの。
それは“絆”という何にも変えられない唯一のものだった。
「…佐奈ちゃん。 少し先生の話をしてもいいかしら?」
そんな風に感じている中で、鈴木先生は再び口を開いた。
「あ、はい。 話してください」
だけど先生の口調はあたしの感情とは正反対のもので、返答するあたしの声も自然と身構えたものになる。
先生は隣りで歩いているあたしを見ながら、言葉には似つかわしくない笑顔を浮かべる。
それは、思い出を振り返った時に不思議と感じる切ない感情に、どこか似ているような気がした。
先生はさらに歩幅を狭くして、それに合わせた口調で話し始めた。
「…先生も。
本当は小さい頃から――ピアニストになりたかったの」



