光を背負う、僕ら。―第1楽章―

普通の人。



それがお母さんと違うところ。




ピアニストであるお母さんの手は、とても大事な部分。



たとえ日常生活が出来るほど手首の機能が戻ったとしても、ピアニストとしての機能を取り戻せなければ意味がない。



……そう。



“天才ピアニスト”としての実力を発揮出来ないならば。




「日常生活にも支障がなくなって、普通の生活を取り戻した頃。私は久々にピアノに触れた。前みたいにピアノを弾けるようにって願いながら。」



「………。」



「……だけど、無理だったの。普通に弾くことは出来る。だけど、前のようには弾けない。……それが、現実だった。」




再び聞かされた現実。



知っていたことなのに、とてもショックを受けた。



だって本当はいつだって、信じていたの。



お母さんが前みたいにピアノが弾けないなんて、嘘だって。



だってあたしはその演奏を聞いたけど、まるで事故なんてなかったみたいに上手かった。



だからこそ、何度も、何度も、嘘であると信じた。



本当は、今だって……。