光を背負う、僕ら。―第1楽章―

実夏の言葉に答えず、ただ頬杖をついて、運動場の後ろに見える大きな緑色の山を見渡した。



先ほど見た時とは違って、その上空には灰色の雲が広がっている。




一雨、くるかな…。




あの山は、この学校より西に位置している。



風向きから考えて、多分あの雲はこっちにくる。



たまたまこの前見た科学のテレビ番組で言っていたことを思い出して、自分なりに天気を予報してみた。



その間、実夏は黙ったまま。




きっと、あたしの返事を待っているんだ。




けどあたしは、なかなか返事を言えずにいた。



だって、まだまだ不安なの。



自分は噂に流されていないって答えられる、根拠がないから。




さすがの実夏も、痺れを切らしたらしい。



あたしの返事を聞く前に、また実夏が口を開いた。




「泣くほど、好きなんじゃないの?」




実夏の言葉に反応して、実夏を見る。



今まで気付かなかったけど、実夏はずっとあたしを見ていた。




「泣くほど、好きなんでしょ?そんなに人を想えるのは、噂のせいじゃないよ。」




実夏の言葉が、直接頭に響いてくる気がした。



だって、そんな風に言ってもらえるとは思わなかったから。