光を背負う、僕ら。―第1楽章―

つい先ほど吹いた強い風とは違う、そよそよとした優しい風が髪の毛を撫でる。



目頭や目尻に溜まった残りの涙を指で拭い、あたしはゆっくり顔を上げた。



実夏は撫でていたあたしの頭から手を離す。




「ありがと、実夏。」




そう言って、笑ってみせた。



ちょっとでも泣き顔の面影が残らないように、精一杯笑った。



その際、腫れてしまったと思われる目の周辺に、ピンとした張りを感じる。




「佐奈、瞼腫れてる。目も充血しちゃってるし、顔洗いに行く?」



「大丈夫。5限目の授業、プールだから。」



「そりゃそうだけど…。」




肩をすくめて苦笑いする実夏。



そんな姿を見て、少しホッとしていた。



だって、あたしが泣いたことでしんみりしてほしくないもん。



そう思った矢先、実夏の表情が少しだけ真剣なものに変わった。



実夏が口を開かなくても、なんとなく何のことを言おうとしているのかわかる。




「…佐奈さ、やっぱり噂には流されてないと思うよ?」




やっぱり…。



最初に浮かんだのは、その思いだった。