光を背負う、僕ら。―第1楽章―

本当は、自信がないだけ。



“自分は、噂なんかに流されてない”って、胸をはって言える自信が――…。



でも、信じたくて仕方がない。



あたしは、自分の意志で伸一を好きになったんだって。



だって、胸が苦しくて涙が出るほど、伸一のことが好きなんだもん…。




実夏に顔を見られないように、ベランダの柵に顔を伏せる。



実夏は、ずっとあたしの恋を応援してくれた。



そんな実夏に、悲しむ顔は見せたくなかった。



その時、ポンッと頭に何かが触れた。




「落ち着いたら、言ってね…?」




今のあたしには、あまりにも優しすぎる言葉だった。



あたしはただ、コクリと頷く。




実夏は、知っていたの?



あたしがうつむいて、泣いていたことに。




実夏はあたしが落ち着くまでの間、そっと頭を撫でていてくれた。




一瞬、学校で泣くと誰かに見られるかなって心配になった。



だけどこのベランダにいるのは、実夏とあたしだけ。



教室にいる人も、運動場にいる人も、誰もあたしが泣いていることに気付いていない。



幸いな環境のおかげで、あたしは溜め込んでいた感情を涙と一緒に出すことが出来た。