行く場所なんて、どこでもいい。



ただ、一人になりたいだけだから。




あたしは少し急ぎ足で歩き出す。



…と、その時だった。




「キャー♪」



「ヒューヒュー!」




隣りのクラスである1組の前を通り過ぎる時、女子や男子の冷やかす声がはっきりと聞こえてきた。




…なんだろう?



少し興味が沸いたあたしは、廊下にいた人達が1組の教室のドアから中を覗くように、人だかりの後ろで少し背伸びをして中を覗き込んだ。



すると教室内には、たくさんの人に冷やかされる人物が二人、教室の真ん中に立っていた。



とっさに、嫌な予感がした。




あたしが見たのは、クラスメート達に冷やかされて顔を赤くする伸一と真奈の姿。



二人はとても仲良さげに、一緒にいる。




…やっぱり、そうだったんだ。



こんなことなら、見なきゃよかった…。




あたしは教室を覗き込むのをやめて、急ぎ足ではなくて走ってトイレに向かった。




…バタンッ!!




トイレに着くなり、個室のドアを勢いよくしめて中に入る。



ドアを締める音は、トイレの外まで響き渡るほど大きかった。