実夏が不思議がる声を押し退けるように、言い切った。



でも、言っていることは本音ではない。



ただの…強がりだ。




だって、強がらないとダメなんだもん。



強がらないと、今にも心が崩れて感情が溢れ出してしまう。



伸一と同じクラスになれなかったということに対する感情ではなく、別のある出来事に対する感情が…。





「…そう?」




実夏の声が、いつしかあたしを心配する声へと変わっている。



実夏が直接言わなくたって、あたしにはわかっていた。



実夏が本当は、何に対して心配していたのか。




「大丈夫だって。そんなにあたし、やわじゃないもん。」




そう言いながらもあたしは、足元に視線を落としていた。




きっと今、すごく情けない顔してる…。




「……ちょっと、トイレに行ってくるね。」




あたしはなんだかその場にいられる気持ちになれなくて、そう言ってみんなの元から離れて一人で教室を出た。



だけど、今は休み時間だ。



教室だけじゃなく、廊下にも人がいるのは言うまでもない。



特に行く宛があるわけでもないあたしは、さっきとっさに口走った通りトイレに向かうことにした。