「佐奈、残念だったね。」




朝の休み時間。


新しいクラスメートが集まる教室で、仲の良い友達と集まりおしゃべりしていると、途切れた話題の合間にそんな一言がぽつりと出された。




「えっ、何が?」




先ほどの言葉を口にした、小学生時代の親友である実夏に尋ね返す。



すると実夏は、その場にいた他の友達に聞こえないように小声で言った。




「だって、伸一君と同じクラスになれなかったじゃない。」




実夏の言葉に、ドキッとする。



心の奥から、何かが引き出されそうになった。




そうだ、実夏には言ってあるんだっけ。



あたしが、伸一のことを好きだってこと。




あたしは出来るだけの笑顔を装い、自分の気持ちを隠すように言った。




「あっ、それならいいの。そんなに残念に思ってないしね。」



「えっ、本当に?」



「うん、いいのいいの。」