光を背負う、僕ら。―第1楽章―

「顔を見たらわかるよ」と言葉を付け足すと、伸一は困ったように顔をしかめてしまった。




あれっ?


なんかあたし、悪いこと言った…?




不安の思いが芽生えた時、伸一が遠慮がちに口を開いた。




「そりゃあ、すげー読みたいけどさ…。」



「……?」




言葉をつまらす伸一をじっと見つめると、さらに遠慮がちに言葉を続けた。




「佐奈がせっかく買った本なのに、俺が読むなんてなんか悪くないのか?それにまだ全部読んでないみたいだし…。」




伸一の言葉から、あたしに対して遠慮する訳がとても伝わってきた。




そんなこと、全然気にしなくていいのに…。




「そんなこと、気にしなくてもいいんだよ?買ったあたしが貸してもいいって言ってるんだもん。それにねこれ、一回最後まで読んだことあるからいつだって貸せるよ。」




精一杯の出来るだけの笑顔でそう言った。



そうすれば伸一が、心置きなく本を借りてくれると思ったから。




あたしの気持ちが届いたのだろうか。



ずっと遠慮気味に表情を堅くしていた伸一の表情が、フッと笑みをこぼして和らいだ。