これは飽くまで一つの仮説であって、主観による現実に過ぎない。
統計的な結果や各々の交遊関係だけで全てを判断する事は不可能である。
いつの世も人間の性質は変動し、ステータスにそぐう魅力という基準も、やはり時代によって定まる事をしらないのだ。
安定した公務員、経営者、アーティスト、コメディアン、TVタレント、そんな優遇されるはずの基準すらも、全ては変動的に魅力の格差が生まれている。
職種の基準ならこう簡単に説明する事は可能だが、人格の魅力を言葉で表現するのは誰にとっても難しいだろう。
この三人にもそれは同じように言えて、美紀は醜く性悪な田辺という対象を擁護している。
莉奈は利己主義の塊とも言える誠二に心を奪われている。
そして田辺は、自身を醜いと知りながら、その偽りの純粋性を武器に多数の対象を簡単に手中に納めている。
今もこうして田辺はバスルームに閉じこもりながら、本来望む対象への欲求が募り、順応の果てにある征服済みの対象を捨てようと画策している…。
そう…、田辺は今日、捩曲がったその性質で思い悩み、美紀に別れを告げるつもりだった…。
「…遅くない?」
美紀はバスルームの方に何度も視線を移しながら言った。
「そうだね…。」
莉奈はさほど気にも止めず、大かな…、という言う必要のない発言は控え、これからの展開でどう真理へ繋げようかを考えていた。
「こんな時間からはちょっと迷惑かな…。後でメールだけしよ。」
美紀は自分の携帯を眺めながらそう言った。
「さっき言ってた親友って…、どんな人?」
莉奈は少なからず真理に人格に興味を持ち、誠二の"告白"から救う程の人間なのかを測ろうとそう聞いた。
「超良い娘だよ!だって私の親友だもん!ずっとそれは変わらないよ。ただ、今でも真理が私の事そう思ってくれてるのかがちょっと不安…。マサキ君と付き合い出してから結構メール返すのとか遅いし…、私がね!自分でひどいなって分かってんだけど、なんか多分私は…、色んな事いっぺんに出来ないんだと思う…。」
美紀は今まで真理に言いたかった自分の心情を莉奈に打ち明けるように言った。
「分かる!莉奈もそうやけん!一つの事しか考えられん…。」
莉奈は多少美紀に心を開いた様子で言った。
