僕らの背骨


「…何で防音がちゃんとしてんの?」
美紀はベンチから腰を上げながら言った。

「皆、声出すからだろ?」
田辺は気味の悪い笑顔を見せながら言った。

「こっちです!」
莉奈はその会話を遮るように言った。

「馬鹿じゃん…。」
人前で…、という細かな指摘は入れずに美紀は田辺に言った。

部屋に入ると莉奈は一瞬、自分で汚しに汚した部屋の光景を思い出した。

「ちょ、ちょっと待って!」
莉奈はそう言い、電気を点ける前に一旦二人を部屋の外に置いてドアを閉めた。

そして素早く電気を点け、部屋を見回した。

すると部屋は生活感のない真っさらな状態でその装いをあらわにしていて、ベッドやタオル、バスルームのシャワーやトイレ、その全てが初めて部屋に入った時の状態に戻っていた。

「そっか…、掃除の札…。」
莉奈はそう呟きながら外出時の自分の行為を思い出した。

すぐに莉奈はドアを開けると、愛らしい笑顔を見せながら二人を部屋の中へ招き入れた。

「…何だったの?誰かいんの?」
美紀はキョトンとした顔で部屋に入りながら言った。

「いやっ、部屋汚いかなっ…て思ったんだけど、ホテルの人が掃除してくれてた。」
莉奈は苦笑いで自分のはやとちりを認めた。

「ちょっとトイレ借りるよ。」
田辺はそう言うと莉奈の返事を待たずにバスルームに入って言った。

美紀は莉奈と二人きりになると、少し恥ずかしそうな表情を見せながらバッグを下ろした。

「取り敢えず…、教科は何にする?短時間じゃ全体的には無理でしょ?」
莉奈は沈黙を感じる前にそう言って場を繋いだ。

「じゃあ、数学!別に苦手って訳じゃないんだけど、ちょっと不安だから…。」
美紀はバッグから教科書とノートを取り出しながら言った。

「…数学か。」
莉奈は可もなく不可もなくといった自分の数学の成績を思い返しながら呟いた。

「てか眺め綺麗…。なんかここ超泊まりたい…。」
美紀は窓から見える夜景を眺めながらそう言った。

「…別に良いよ。門限とか大丈夫なら…。」
莉奈は多少迷いながらそう言ったが、結果目的が果たせれば良いと考えていた。