僕らの背骨


「今、方言出た…。莉奈ちゃん方言出たよ!超可愛い!!(笑)」
美紀は心底興奮しながら言った。

「…えっ?」
莉奈は顔を赤面させながらあたふたしていた。

「聞いた?マサキ君も聞いた?
"山口も好きやけん…"って、超可愛くない!?」
美紀は田辺の腕を何度も引っ張りながら言った。

「聞いたよ、ていうか腕痛い…。」
田辺は引っ張られた腕を軽く振りほどきながら言った。

「山口って何々"やけん"とかって言うんだ?なんか博多とかもそっち系じゃない?同じ九州だっけ?」
美紀は自分で馬鹿をアピールしていた。

「いえ、違います…。山口県は中国地方です…。」
何故二度もこんな説明を…、と莉奈は思いながら、また敬語に戻しキチンとそれを伝えた。

「あっ、てかそれさっき聞いたし!!(笑)ごめんね、私超馬鹿だね。」
美紀はあっさりそれを認めて言った。

「………。」
莉奈は否定しなかった。

「山口県って東京から新幹線でどんくらい掛かんの?」
田辺はそんな意味もない質問で場を一旦落ち着かせた。

「えっと、4時間くらいかな…。もっとかな…。」
莉奈は行きの新幹線での移動時間を思い返したが、あの時は誠二の事を熟考するあまり、体感的な時間経過は正確ではなかった。

「すげぇ遠いな…、一人で旅行って結構すんの?」
田辺は莉奈に聞いた。

「初めてです。一応これも経験かな…、って感じで。」
莉奈は一人旅の理由を先程自分でどう説明したかを思い出しながら、あやふやなニュアンスで言った。

「ふ〜ん…、親戚に会いに来たんでしょ?今日はもう良いの?」
美紀は言った。

「昨日会ったんで…、今日と明日は普通に観光して帰ります。」
莉奈は時間に余裕がある事を美紀に理解してもらう為に、"今日"という日も一応観光の枠内だと説明して言った。

「…一人で観光って寂しくない?」
美紀は言った。

すると莉奈の胸にチクリと痛みが走った。

寂しい…。

莉奈はその言葉を何度心の中で叫んだ事か…。

今こうして見知らぬ人間と会話を交わし、求める目的の為に嘘を重ねている。

莉奈は自分が何をどうしたいのか…、全てを見失いそうなその不安を、必死に胸の奥で抑えていた。