僕らの背骨


「今さぁ清水の彼氏見たでしょ?あれが彼氏だよ?おかしくない?清水ってカットモデルとかするくらい可愛いし、普通にモテんのに…、なんで田辺だよ!(笑)」
女生徒の友達は褒め言葉とも捉えられるニュアンスでそれを説明した。

「ごめんなさい、あんまり見えなかったです…。」
莉奈は言った。

「マジ見て来なって!ほんとにヒドイから!でついでに話してくれば良いじゃん。なんか話しがあるんでしょ?」
女生徒は軽いノリでそう言った。

「あ、はい…。ありがとうございました。」
莉奈は女生徒達に軽くお辞儀をした。

女生徒達は莉奈と数歩離れると、すぐに莉奈に対するよからぬ推測で盛り上がっていた。

「えっ、マジで?中1くらいじゃないの?」
女生徒は言う。

「いや、意外にさ…。」
女生徒の友達は言う。

背後から聞こえるそんな推論は、莉奈の胸にこれっぽっちも響く事はなかった。

人の悪口を言う人間は嫌い…。

莉奈は会話の最中ずっとそんな自己主張を頭の中で繰り返していたのだった。


通りの角を曲がると、先程のカップルは今も変わらず手を繋いでいて、仲よさ気に話していた。

莉奈は悩んだ…。

話し掛けるべきだろうか…。
それとも一人になるのを待つべきか…。

しばらく二人の後を尾けていると、莉奈はその後ろからの光景を見て、急に胸が苦しくなった…。

決して羨ましかった訳ではないが、ただ…、思い出してはいけない誠二との幸福な情景が、どうしてもフラッシュバックしてしまうのだ。

手を繋ぎ、笑顔を見せ、肌を寄せ合う…。

友人同士では決して成し得ないその特別な安心感は、今の莉奈には皆無に等しかった。

胸の奥底に隠した求愛という心を、莉奈は否定出来るだろうか…。

今こうして、成立した擁護の対象同士を目の当たりにすると、莉奈は苦痛を感じる。

それがまさしく求愛の兆候であり、その感情を否定出来ない理由でもある。


莉奈は走り出した。

何を言えば良いのか…、その答えを見つけ出せずまま、莉奈は二人に向かって走り出したのだった。

二人の背後で急に足を止めると、莉奈は息をあらげながら顔を真っ直ぐ向けた。