僕らの背骨


「………。」
莉奈は黙り込み、若いだの恋だの…、大人目線から見た少年少女達の悩みとはせいぜいそんな物なのだろうか…、と思った。

若いから恋をする…。

仮にそんな定義があるとしたら、理由として精神が熟成されていないという事や、異性への理解度が低いという事が挙げられる。

しかし未発達な観念で物事を判断するからといって、必ずしもそれが恋愛の失敗に値するだろうか。

悩める未熟な概念は唯一の思考の矛先になり、熟成した感性で複数を同時進行するよりは効率的とも言える。

つまり一般的な成人女性が仕事や友人関係、金銭の悩みや恋愛を同時に解決しなければならないとしたら…、全てはつまみ食いのような感覚で悩む事になり、いつまでもそれが継続される事が大多数だろう。

しかし莉奈のような悩める少女がただ一つの事を…、例えばそれが誠二だとしたら、莉奈は自身のベクトルを唯一それだけに絞り、時間の許す限り悩み抜く。

解決するにしてもしないにしても、悩める先にある完全燃焼は間違いないだろう。

"全ては自分次第"という言葉はこういった場合にも適応される。

人間は解決を目的としているのではなく、自身でそれを納得出来るかどうかが最も重要なのだろう。

悩み、疲れ、形成する…。

やがては大人になり、それを一つの経験として捉える。

あの頃は若かった…。
だから失敗した。

決してそんな事はない。

悩める少年少女達こそ、完全なる"思想の姦通者"なのだ。

一つ一つを唯一の苦悩として胸に秘め、時には一人でそれと闘わなければならない。

莉奈もまた、その一人である。


「お嬢さんあんまり喋らないね?人見知り?」
運転手はしつこく会話をせがんだ。

「じゃあ…、聞いてくれますか?」
莉奈は言った。

「ん?なになに?」
運転手は心を踊らせながら言った。

「莉奈の彼氏は障害者なんです…。耳が聞こえなくて、あと両親が死んでて…。」
莉奈は運転手の方は見ずに話していた。

「…そっか、でも人間は辛くてもしっかりと生きていかなきゃね!」
運転手はよく聞く文句で莉奈を励まそうとした。

「その彼はお父さんを殺されたって言ってた…。田中秋子っていう名前の、お父さんの奥さんに…。」