僕らの背骨


しかし、先ずは秋子に会うという選択肢を除外しなくてはならない。

自宅の住所を記憶していなかった事もあり、もし調べるにしても真理に接触しなければ莉奈にそれを調べる事は出来そうになかった。

もし莉奈に手段を選ばぬ程の行動力があったのなら全ては簡単だが、莉奈は誠二とは違い、そこまで深い信念や思惑を持っていなかった。

それは当然と言えば当然で、莉奈は今でこそ"自分の役割"という存在で自身を突き動かしてはいるが、飽くまでそれは誠二が真理を傷付けない為の行動であり、莉奈自身が手段を選ばぬ行動を起こしてしまえば、それは本末転倒である。

少なくとも"誰も傷付けない"、という前提だけは守ろうと莉奈は考えていた。

「タクシーで学校行くなんて贅沢だね?」
運転手は言った。

「いえ、…あの、友達に会いに…。」
莉奈は出来れば受け流そうと顔を外に向けながら言った。

「あぁ、そうなんだ。確かにこんな時間から登校なんておかしいよね!(笑)ごめんごめん。」
運転手は愛想の良い笑顔を見せながらそう言った。

「………。」
莉奈は軽く愛想笑いを見せて会話を遮断しようとした。

やはり密室で見知らぬ男性との会話は落ち着く物ではなく、馴れない環境に置かれている莉奈にしたらそれは顕著に態度から表れていた。

「お嬢さんいくつ?」
運転手はそんな莉奈の表情から心情を理解する事は出来ず、世間話を広げようとした。

「…15です。」
莉奈は素っ気なく言った。

「15歳かぁ〜…、若いね〜。私の息子がもう二十歳だからね…、やっぱり老けたな。」
運転手は会話ではなく独り言のように喋っていた。

「………。」
莉奈は一瞬その運転手の後頭部を睨み、その後また外に視線を移すと、運転手に聞こえるように大きく溜め息をついた。

「…なんか悩み事?おじさんでよければ聞くよ?」
運転手は悪気なくそう言った。

そう、悪気はないのだ…。

もちろん莉奈も、その運転手を嫌な人間だと線引きをした訳ではない。

ただ煩わしい…。
それだけなのだ。

「…恋してんの?良いね〜、若いって!」
ここまでくると嫌がらせだが、運転手は爽やかな笑顔を絶えず見せながら言っていた。