僕らの背骨


莉奈は食べ終わるとそのゴミを袋に詰め、シャワー室に入った。

寝てる間に莉奈の全身は汗で臭いを放っていて、加えて雨に濡れたまま髪を放置した事から髪型は酷い有様で、シャワーを浴びなければ修正しようがなかった。

二回目という事もあり、莉奈は慣れた様子でシャワーを済ませた。

ついでに洗面台で歯磨きや髪のセットもすると、莉奈は鏡の自分を見て、自分がすべき事を再認識した。

「莉奈が全部するけん…。誠二は見守っといて…。」
莉奈が敢えてそれを声に出して言ったのは、元々ある独り言の癖のせいではなかった。

それを声に出して言う事で、逃げてしまいそうな自分に重圧を掛けたかったのだ。

莉奈はシャワー室を出ると、さらなる重圧を自分に掛ける為に、誠二にこんなメールを送った。

−莉奈、真理さんに会いに行く。
誠二がしようとしている事とは少し違うけど、莉奈は自分がするべき事をするね…。−

こんなメールを送る事で、莉奈は少なからず誠二からの返信を期待したが、それは飽くまで以前の莉奈の感覚の名残であり、真意ではない。

メールが帰って来たとしても、否定の意味合いを含んででしか誠二からのメールは期待出来ない。

返信は否定で、
無視も否定なんだ…。

莉奈はそれを分かっていた。

だからこそ、その期待はただの求愛の名残であって、今の莉奈にはあるべき物ではない。

制服を手に取り一つ一つそれを身につけると、莉奈は鏡でその姿を確認した。

自分に出来る事…、
自分がすべき事…。

莉奈は頭の中で繰り返した。

もうあの求愛の絵図は生まれない。

肌を寄せ合い熱く濡れた唇を重ねたあの記憶は、今では遠い存在としてはっきり認め、その時間を取り戻す為ではなく、自分が自分である為に莉奈は"行動"する事を心に誓った。

そう…、
莉奈自身の誠二への気持ちを、ただの執着にしない為に。


莉奈はバッグはそのままにして、手ぶらで部屋を出ようとした。

すると入口のドアに横に引っ掛けられていた"掃除して下さい"と書かれた札に気付いた。

裏には"起こさないで下さい"と書かれているのを見て、莉奈はその意味を理解した。