僕らの背骨


しかし、逆にあれが真実なら…。

莉奈は胸中で恐れを感じた。

もしそうでも、尚更母親から全てを告げるべきなんだ。

そう…、それは誠二の役目じゃない。

自分が出来る事は、きっとその"配役"なんだ。

告げるべき人間、
全てを知るべき人間、
そして見守るべき人間…。

誠二は飽くまで見守るべき人間であり、決してそれを告げてはならない…。

莉奈はベッドから起き上がり、自分がすべき事を認知した。

そして思考を巡らせ、あの調査報告書に書かれていた情報を莉奈はかろうじて思い出した。

莉奈が記憶していたのは二つ。

"田中真理"という氏名と、
彼女が通う学校の"清林学院"…。


莉奈は携帯を開き、ネットアクセスでその学校名を検索した。


−清林学院 "住所"−

莉奈は開かれたそのページをブックマーク登録して、携帯を閉じた。

そしてベッドから降りゆっくり立ち上がると、半乾きの服を脱ぎ、バッグから着替えを出した。

ベッドに置かれたその着替えは莉奈が通う学校の制服で、旅行に持っていくには不自然な着替えだった。

しかしこれは莉奈なりの誠二へのアピールで、以前二人で過ごした楽しい時間を思い出してもらう為に、敢えて持参したのだった。

結局これはその意図とは別の形で有効活用する事になった。

私服の不審な少女が学校付近をうろうろしていたらきっと補導される。

そんな事態を見越して、莉奈はこのブレザータイプの制服をバッグから取り出したのだった。

気付けば頭痛は治まり、忘れていたコンビニの惣菜炒めが莉奈の視線を奪った。

「…買っといて良かった。」
莉奈はそう呟き、袋から惣菜炒めを手に取ると、椅子に座りながら包装を開け始めた。

ふとその時、莉奈は昨夜に行ったお洒落なレストランを思い出した。

「…絶対明日行こ。」
莉奈はまるでコンビニの惣菜炒めに何か文句でもあるようにそう言った。

やはり莉奈は物事は一つしか考えられない性格で、こうして食に意識を取られてる以上、それ以外は頭の外にあった。

誠二も…、真理も…、
この瞬間だけは、莉奈の中でその惣菜炒めに存在を奪われていた…。

「…冷めとうけど美味い。」
莉奈はそう呟いた。