僕らの背骨


しばらくすると莉奈はゆっくり目を閉じ、そのまま眠りについた。

消し忘れたテレビや照明は、目を閉じれば睡眠に対して何の障害にも感じず、無音にも近い遠くの光りが莉奈の寂しさを微かに慰めていた。

体に張り付いた衣服は次第に中から蒸し、莉奈の前髪から雨の水滴が一粒落ちる。

今だにシーツはベッドメイクがされた状態のままで、莉奈は凍えるように自身の腕を抱いていた。

誰に何かを言われた訳ではない…。

しかし、莉奈は今日という日を人生で一番孤独な日と思った。


あの男が本当に誠二だったのか…、今の莉奈にはもうどうでもよかった。

自分は誰からも必要とされてない…。

それが現実で…、
それがこれからも続くのだ。


「…誠二。」
莉奈は小さく男の名を寝言で言った。

そう、それはもう寝言でしか言えない求愛の名前で、意識を持ってしてその名前を言うのは執着でしかない。

…諦めよう。
莉奈は眠りの中でそう意識した。

拒絶され傷つくのはもう疲れた…。

自分はそんなに強くない…。


今誰かが自分を抱きしめてくれるなら、他には何もいらない…。

何も言わなくて良い…。
慰めて欲しいんじゃない…。

今だけ、
ただ抱きしめて欲しい…。


莉奈の前髪から、
また一粒の滴が落ちる。

莉奈は目を閉じたまま、
その音を聞いていた。


{11月1日 PM 4:39}

夕方になる頃、莉奈は激しい頭痛で目が覚めた。

ゆっくり身を起こすと、莉奈は急な吐き気をもよおしトイレに駆け込んだ。

すでに最後の食事は消化が済んでいて、莉奈の吐き出した胃液は喉の奥に痛みとしてそれを伝えた。

不規則な呼吸と苦痛によって流された涙は便器に流れ落ち、莉奈は次第に治まった吐き気を忘れるようにトイレの水を流した。

莉奈は蛇口の水で口を濯ぐと、鏡の自分を見ないようにバスルームを出た。

乱れた髪型や顔色が悪いのは見なくても莉奈は自分で分かっていた…。

だからこそ、そんな自分を見るのが嫌だったのだ。

これ以上最悪な気分は味わいたくない…。

それが莉奈の心情だった。


莉奈は飲みかけのペットボトルのお茶をベッドに横たわりながら器用に飲み込んだ。