莉奈はしばらく立ち読みをした後、飲み物の棚に向かった。
ホテルの室内にある飲み物でも充分よかったが、せっかくコンビニまで来たのだから…、と思い、莉奈は普段好んで飲んでいるパックの紅茶とペットボトルのロイヤルミルクティーを選んだ。
莉奈はそのまま弁当の棚に行き、飲み物を片手に持ちながらいくつか惣菜系の商品を視覚で吟味していた。
結局ほうれん草がベースの惣菜炒めを選びそれを手に取ると、莉奈は背後の棚にあった菓子パンコーナーに視線を移した。
莉奈はお気に入りのチーズブレットを即座に選ぶと、それも手に取ってそのままレジへと向かった。
「いらっしゃいませ。こちらは温めますか?」
店員は惣菜炒めを手に持ちながら言った。
「お願いします。」
莉奈はその時、ホテルへの飲食物の持ち込みはマナー違反ではないのだろうか…、と考えた。
「760円になります。」
店員は惣菜炒めを温めている間に、効率良く会計を済ませた。
莉奈はホテル内にある売店の存在を思い出し、持ち込みが違反な訳ないな…、と心配性な自分の性格を再認識していた。
「お待たせ致しました。ありがとうございました。またお越しくださいませ。」
店員は流れるようなスムーズな対応で莉奈に商品を渡して見送ると、もう次の客の対応を始めていた。
莉奈は商品の入った袋を片手にコンビニを出ようとすると、入口のガラス越しに写る"豪雨"に気付いた。
「…うぁ。」
莉奈は辺りが見渡せない程の土砂降りの雨を眺めながら、自分の馬鹿さ加減に嫌気がさした。
傘を買い忘れたのだ。
莉奈は入口付近にあった商品のビニール傘を煩わしそうに手に取ると、先程のレジにまた並んだ。
莉奈の前には背の高い細身の男が缶コーヒーを買っていた。
すると、莉奈の鼻にどこか懐かしい匂いが過ぎる…。
それが何の匂いだったか…、莉奈はすぐに思い出す事が出来ず、下を向きながら記憶を蘇らせようとした。
その背の高い男性が会計を済ませ、静かにコンビニを出て行くと、莉奈の脳裏に幸福な光景が感覚として過ぎった…。
{9月14日 PM 4:41}
熱くほてった莉奈の顔が誠二の首筋に触れ、そのまま顔を擦るように唇を近づけると、小さく濡れた音を立てながら唇が重なる…。
