僕らの背骨


一通り洗い終わると、莉奈はバスタオルで身体を拭き、ドライヤーとヘアブラシを持ってシャワー室を出た。

タオルを巻いた莉奈の姿は何だか滑稽で、鏡に写された小さく華奢なその身体は、相も変わらず色気がなかった。

「まだ、中学生やけん…。これからこれから…。」
莉奈はそんな事を言って自分を励ましながら、"豊満な胸"を手に入れた未来の身体理想図を頭に描いていた。

莉奈はドライヤーを机のコンセントに差し込み、髪を乾かし始めた。

温風を頭に向けながら何気なく窓を見ると、景色はすっかり早朝の装いになっていて、莉奈の希望ある一日の始まりを予見させていた。


「お腹減った…。」
髪を乾かし終わると莉奈はそう呟きながらペットボトルのお茶を飲み込んだ。

そしてペットボトルを片手に設備表を改めて見直すと、売店の開店時間までまだ3時間もある事に気付いた。

「えぇ〜…、お腹空いた…。近くにコンビニあるんかな…。ていうかこんな時間に外出して良いんかな…。」
莉奈はホテルでの慣れない宿泊に今だに戸惑いを感じていた。

点けっぱなしだったテレビからは朝の天気予報が映し出され、それを何となく見ていた莉奈に"豪雨"という不運この上ない予報を知らせた。

「東京は豪雨…。もう〜…、何でそんなに莉奈をいじめんの…。」
莉奈はヘアブラシをベッドに投げ付けながらふて腐れていた。

窓を見ても豪雨の兆しは顕著に感じられた。

景色に広がる厚く黒い雲は今はまだ雨の雫を落とさずにいるが、後一時間か…、もしくは数十分でその溜まった水滴を勢い良く溢れさせ、その雑踏の影を濡らす事だろう。

「…出よう!」
莉奈はまだ降り出さない今しかチャンスがないと判断して、身支度を始めた。

基本的に莉奈は物事は一つしか考えられない性格で、誠二の事を考えるにしてもその時は誠二の事だけしか頭に入らず、それ以外は100%意識の外にある。

今はこうしてコンビニで食べ物を買うという意識を持っていて、それ以外に当たる誠二はすっかり頭から消えている。

莉奈は今までそうやって、自身で認知する足りない頭を補うように一つ一つを整理し、解決していた。