{11月2日 AM 4:16}

莉奈は部屋に戻ると、ベッドに倒れ込んだ…。

誠二は迎えに来ない…。

莉奈はそれを確たる事実と捉えていた。

それでも、"必ず迎えに来る"というあの言葉を、莉奈は今でも回想し、胸を高揚させていた。

もし誠二が死んだら…。

莉奈は突如そんな想像をした。
あれが最後の別れになり、二度と会う事は出来ない…。

莉奈はシーツを体に巻き、その孤独感を紛らわせた。

震える体は今もその寒さを肌身に感じさせ、儚くも想う求愛の交わりを願っていた。

擦れ合った誠二の肌はすでにその余韻を消していて、思い出そうと意識を凝らすと、莉奈は更なる悪寒に震えた。

孤独は次第に体調にも影響し、莉奈は立ち上がる事も、何かを考える事も、そして寝る事すら出来ないでいた。

今誠二が優しく抱きしめてくれたら…。

莉奈はそんな漠然としたイメージだけを頭に巡らせていた。

するとふとドアをノックする音が聞こえた。

莉奈は咄嗟に体を起こしながら誠二の抱擁を意識に描いた。

ふらつく足元を必死に踏み締め、莉奈はドアの前まで歩いた。

誠二じゃない…。

莉奈はドアノブに触れると、そんな予想が脳裏に過ぎるのを感じた。

敢えて覗き穴は見ず、莉奈はそのままドアを開けた。

「………。」
田辺正樹は無言でドアの前に立っていた。

「…何?」
莉奈はふて腐れた表情をしながらそう言った。

「…誠二と話した。」
正樹は言った。

「…だから何?」
莉奈はそう言うとドアを乱暴に閉めた。

すると間髪入れずに正樹はドアをノックし、その意図を伝えようとした。

「…何なの?」
莉奈はふらつきながらも身を支えて言った。

「…俺は、あれで良かったのかな…?腹は立ってたけど…、あいつはそんな悪い奴には見えなかった…。」
正樹は誠二に言った主観的な発現を後悔した様子でそう言った。

「…くっだらない。男なら自分のした事にちゃんと責任持ってよ…。何?私のせいにしたいの?」
莉奈は冷たくそう言った。

「ちげぇよ…。ただ…、お前の言ってた"誠二"ってのはさ…、飽くまで昔の誠二で、今とは違うんじゃねぇのかな…。」
正樹は真顔で言った。