僕らの背骨


「うわぁ〜…、なんか凄い…。ワインみたい。ていうかこのグラス高そう…。」
シャンデリアからの光りを反射するクリスタルグラスに心を奪われながら、真理は予期せぬこの高級な晩餐にときめいていた。

「このグラス"スワロフスキー"なの!綺麗でしょ?でも値段はちょっと分かんないかな…、いつもカードで買うから。」
紗耶の母は無邪気な笑顔を見せながら言った。

「へぇ〜…。」
グラスのメーカーに興味を示すべきか、いつもカードで自由な買い物をするという部分に興味を示すべきかを悩みながら、真理はテーブルに綺麗に並べられたフォークを手に持った。

「一番外側…、ですよね…。」
真理は富裕層の育ちという事もあり、最低限のテーブルマナーは知っていた。しかし、知ったかぶりの生意気な小娘と思われるのも嫌で、わざと不安げな表情をしながら、手に持ったフォークが正しい物かどうかを敢えて聞いた。

「あらっ、良く知ってるわね。まだ若いのに…。」
紗耶の母は感心した様子で言った。

「いやっ、なんかテレビで…。」
真理はそう言った直後、このままでは何だか自分が貧乏人キャラになりそうで不安になった。

「遠慮しないで食べてね。」
紗耶の母は言った。

「…はい、いただきます。」
真理はサラダを口に入れた。

程よくオリーブオイルのかかったそのサラダは、ルッコラと大根が主な食材となっていて、一見それは地味で淡泊な見た目だったが、口に入れた瞬間、ほのかなブラックペッパーが風味として伝わり、そのサラダのシンプルな完成度を伺わせた。

「…あっ、美味しい。」
真理は素直にそう言った。

「ていうか普通のサラダだから!!いちいち感想言わなくて良いよ!(笑)」
紗耶は真理のその礼儀正しさを愛らしくも感じながら言った。

「そうよ、これからコースで出て来るんだから全部にコメントしてたら大変よ!(笑)」
紗耶の母もそんな真理を愛らしく眺めながら言った。

「えっ、いやっ普通に美味しかったんで別にコメントとかじゃないです!」
真理は恐縮しながら言った。


しばらくして三人ともサラダを平らげると、紗耶の母はその空いた皿をキッチンに下げに行った。