その階段横にあるドアを抜けると広いダイニングルームがあり、その中央に置かれた横に長いテーブルには、皿やナプキン、ナイフ、フォークが完璧にセッティングされていた。
そしてそれらを照らし出すシャンデリアはまさに富裕の象徴で、光りの粒に彩られながら見る者を魅力し、今まさに真理をうっとりさせていた。
「…シャンデリアじゃん。…普通にシャンデリアじゃん。」
真理はボーッとした視線でそれを眺めながら言った。
「…だから何?ちょっと真理変じゃない?」
紗耶は言った。
「変なのはあんたんちだから!!何言っちゃってんの!?」
真理は呆れた様子でそう言った。
二人がそんなやり取りをしていると、紗耶の母がサラダの盛られた皿を両手に持ちながら奥から出て来た。
「あらっ、いらっしゃい。」
優しい顔付きで紗耶の母は真理を迎えた。
「…あっ、お邪魔してます。」
真理は軽くお辞儀をしながら言った。
「紗耶と同じクラスの娘?」
紗耶の母はサラダの皿をテーブルに置きながら真理に聞いた。
「あっ、はい…、田中真理です。はじめまして。」
真理はまたお辞儀をしながら、出来る限り愛想の良い笑顔で言った。
「真理ちゃん?可愛い名前ね…。紗耶と仲良くしてあげてね。ちょっと変わった娘だけど、すごく優しい娘だから。」
紗耶の母は少しおっとりした性格らしく、何故か言葉の後に妙な間を空けて話し、その度に優しい笑顔を真理に向けていた。
「ていうか普通にウザイから…。ていうかご飯何?」
紗耶は体裁上、母が娘をアピールする事に拒絶反応を見せていたが、実際、紗耶の心情では母のその気遣いを嫌がってはいなかった。
真理が判断する学校での紗耶の位置付けは、紛れも無く"浮いた存在"であり、休み時間に話す事はあっても、学校の外で会う事はない…。
真理に限らず、クラスの誰もが紗耶とはそんなボーダーラインを引いていた。
紗耶自身、特に嫌われ易い性格という訳ではない。
しかし、最も大きな問題としてあるのが、ただ"絡みづらい"という事だった。
それを理屈で説明しろと言われたら、真理もクラスの他の娘も、誰一人としてそれを説明する事は出来ないだろう。
