僕らの背骨


「…違うの、パパは死んでないんだけど…、パパの弟が…、偶然火事に巻き込まれて…、死んじゃったんだって…。だけどパパの家だったから、パパが死んだ事になったんだって…。」
真理は自身で話しを繋ぎながらそう話した。

「えっ?ていうかそういうの警察が身元を調べるんじゃないの?」
美紀はもっともな意見を言った。

「知らないよそんなの…。とにかくその"誠二"っていう私のお兄ちゃんがちょっと頭おかしいの!」
真理は自分でも話しの全容を整理出来ず、美紀への説明を途中から適当な主観に切り替えて言った。

「…ていうかさ、そのお兄ちゃんと会ったんでしょ?」
美紀は聞いた。

「…うん。…それが何?」
真理は何故か刺のある言い方で返事をした。

「会ったのに…、その時はそんな事言われなかったんでしょ?真理今"言おうとしてる"って言ったから…。」
美紀はその疑問に何か意味を持たせるように言った。

「……うん、あの時は…、言わなかった…。ただ、"伝えたい事がある"ってだけ言われた…。言われたっていうかメモだったけど…。」
真理はその美紀の疑問の意味を即座に正しく捉えた。

誠二は全てを言うつもりだったかもしれないが、結局はそれを真理に伝える事なく姿を消した…。

真理が聞く耳を持たず、あからさまな拒絶をしたからだと言えばそうだが、誠二が事実の告白のみを目的としていたのなら、真理の胸中などに気を遣わず、最初に会った時に手紙なりメモなりで伝えればよかったのだ。

誠二にもその"迷い"があったからこそ、あの時順序を置いて説明しようとしていたのだ。

回想したその誠二の姿は確かに真理の顔色を伺っていて、真理がはっきりと困惑の表情を表すと、誠二は慌てていた。

それを考えると、恐らく誠二はどうにか真理を傷付けずにそれを伝えようとしていた。

しかし、真理がその事実を知る事に一体なんの意味が…。

真理がそれを理解するには、やはり誠二との対話がまだ少なかった。

理解とは共有の時間で蓄積され、いくら血を分けた兄弟であっても、一、二度の異質な対話だけで形になる物ではないのだ。

ましてや誠二からは文字のみの意志伝達で会話を要求される。