「どんな鳥なんだ?婆さん」

弟が言った。



「黒くて小さな鳥じゃ。好物はニンジンじゃ」


「なんか、その手がかりじゃ、とても見つけられそうにないな」


「もし見つけたら知らせますね」


「ありがとうなぁ」



婆の目には涙がにじんでいる。



少し前まで、鬼の形相で、檻に入った私たちを痛め付けていたとは、とても思えない。


きっと浮き沈みが激しい性格なのだろう。





別れ際に、「これ持っていきなさい」と、婆に渡された紙袋には、腐った生ごみが入っていた。




「嫌がらせなのか、好意なのか図りかねるなあ」

弟はそう言いながら、そっと生ごみをコンビニのごみ箱に捨てた。




気付くと、東の空が明るくなり始めていた。