「うわっ!」

叫んだのは扉を開けた人物だ。


湯気の向こうに、見事に六つに割れた腹筋が見える。


「きゃっ!」


とんでもない物を見てしまった。

全裸のハジメだ。



「ごめん。誰もいないと思ってさ……。まき割りしてて汗かいたから……」


「う……うん」


「本当にごめん」


「わかったから、ドア閉めて……」


「わっ。ごめん」



ハジメは我に返ったように、俊敏にドアを閉めた。




しかし、残念ながら、何を間違ったか、ハジメは浴室の内側に立ったままだった。



「ちょっと!ハジメ!」


「げへへ」


「変態!そんな人だったの!?」


「付き合ってるんだ。ちょっと見るくらい良いじゃないか」


「馬鹿!ハジメの馬鹿!」


「だいたい、暗くて何も見えないし……。おや、だんだん目が慣れてきた」


「馬鹿なことはやめて!」



その時だった。




浴室の扉がまた開いた。




「何やってんの。この馬鹿息子!」

ハジメのおかんだ。



「わあ。おかん」


「わあ、じゃないでしょ。ここはおかんのうちなんだから」


「デリカシーの欠けらもないおかんだな」


「ミチコちゃんが嫌がってるでしょ。デリカシーが無いのはあなたでしょ。さ、二人とも、ごはんのしたくができたわよ」


「はい……」



おそらく明るかったら、私の顔は真っ赤だっただろう。



なんとも言えない気まずさと恥ずかしさだ。