明るいクリーム色に塗られた壁に、大きな横開きの扉。


洗面台の横で、小さな冷蔵庫がうなり声をあげている。


吉川ヨシオが、集中治療室から出て、大部屋に移ったというので、今日はサークルの連中とお見舞いに来ている。


部屋の中には、カーテンで覆われたベッドが5台ある。



それらのうちの、どれか一つが、吉川ヨシオのベッドだ。




「平田、いけ」

沼袋部長が言った。



「僕ですか!?」

平田が小声で言った。



「そうよ。平田君、いきなさいよ」

と、真帆。



「げへへ。わかりましたよ。じゃ、いきますよ」

平田はそう言うと、手前のベッドのカーテンの前に立った。



そろそろとカーテンの裾をめくる。


中には、見事にハゲあがった中年の男性が寝ていた。


平田は、ため息をついて、カーテンをもとに戻した。




「次はミチコ先輩です」

目黒さんが言った。


「えー」


「ジャンケンで負けたんだから、いかないとダメですよ」

平田が言う。


「わかったよ」


私は、窓際の奥のカーテンをゆっくりとめくった。




「ビンゴ!」


吉川ヨシオだ。




ほっぺたとおでこに絆創膏を貼られて、いかにも怪我人という雰囲気を醸し出して吉川ヨシオが眠っていた。


火傷をしたという左腕には、包帯が巻かれている。



右腕には点滴まで刺さっている。