おやつは、コアラのマーチだった。



ハジメの部屋で、ベッドに腰掛けて、二人で食べた。


「コアラのマーチ、流行ってるの?」

私が尋ねると、ハジメは、

「知らない」

と答えた。




「さ。影丸のところに行こうか」

ハジメはそう言って立ち上がった。



小屋の外に出ると、ハジメは建物の裏側に向かった。

小屋の裏は、崖になっていた。

なんとか、歩いても恐くないくらいのスペースはあるが、油断してたら落ちてしまいそうだ。



「影丸!」

ハジメが空に向かって叫んだ。


それから5秒くらいして、鳥が現れた。


黒い鳥だ。


翼を大きく広げ、舞い降りた鳥は、ハジメの肩にとまった。




近くで見ると思いの外小さい。



「文鳥?」

私が尋ねると、ハジメは得意げに言った。

「黒文鳥だよ」


「へえ。私、白いのしか知らなかった」


「影丸は人懐っこいんだ」


ハジメは、ポケットから米粒を取り出して、影丸に与えた。


「ミチコ」


「はい」


「俺が山賊だと知っても、逃げ出さないでくれてありがとう」


ハジメはそう言うと、とびきりの笑顔を見せた。