「沼袋さんへ。

なんでもお金で解決できると思わないでください。

私はお金で買えない大切な物を失いました。

あなたたちは、お金だけ払って、すっかり罪を償ったと思っています。

それが私には許せません。

反省してください……」




きわめてまともな手紙だ。

「部長、これって、嫌がらせの手紙なんかじゃないんじゃないの?」


私が言うと、沼袋部長は、首を横に振った。

「これだけじゃないんだよ。目黒さん、次の手紙を読んで」



「はい!ええと……

沼袋へ

お前には反省の色がまったく見られない。

死んで詫びをしろとは言わないが、誠意を見せたらどうだ。

明日の正午までに、伝説の木のうろに、5万入れろ」



「恐喝!?」


「そうだ」


「それで部長は払ったの?」


「ああ……。しかし、また手紙がきて、次は7万を要求してきた」


「払ったの?」


「いや。きりがないからやめた……。そうしたら、この事件が起こった」

沼袋部長は、そう言って、真帆に視線を向けた。




真帆の左腕に巻かれた白い包帯が痛々しい。



「ただの通り魔じゃなくて、リス研の誰かが、真帆さんと吉川ヨシオを襲ったってことですか!?」

平田が言う。



「恐らく、それが正しいと思う」


「警察には言ったんですか!?」


「言ったが、取り合ってもらえなかったよ」


「なんでですか」


「証拠が無い」


「動機があるのに、ですか?」


「そんなものだ……それで」

と部長は言った。



「それで、僕達で犯人を探したいと思う!」




歓声が沸き上がった。