「どうしよう……」


「今は、ミチコが気にしても仕方ないよ」


「二人とも友達だし……」


「とりあえず、もう遅いし、寝よう」


「うん……あ、メイク落とさないと……」


「たぶん洗面所におかんのメイク落としとかが置いてあると思う」


「わかった。ありがとう」




ハジメの家の洗面所は、昭和初期を感じさせるような作りだった。



顔を洗って部屋に戻ると、折り畳み式の小さなテーブルの上に、赤ワインとグラスが用意されていた。



「ちょっと飲まない?」

ハジメが言った。



「友達のことが心配でそういう気分になれないかも」


「こんなときだからこそ」


「じゃあ、少しだけ」




月明かりの差し込む小さか小屋で、私たちは、苦いワインを飲んだ。



一昨年のボジョレヌーボ。


「ワインとか、あんまりわからないんだけど、高そうなやつだったから、大切な日のために取っておいたんだ」


「ありがとう」



「邪道かもしれないけど、スプライトで割ると美味しいよ」


「本当だ。飲みやすい」




気付いた時には、二人で1本空けていた。



体中が熱くなって、すっかり酔いが回っているのがわかった。