「燃えたのはゴミだけで、家は無事みたいだな」


橘は興味津々だ。


「ゴミ屋敷、迷惑だと思ってたけど、なんかかわいそうだね」


「自業自得ってやつじゃね?」


「っていうか橘、前見て!?」


「うお!」




ガシャンという音の後に、鈍い衝撃。




「きゃっ!橘、自転車ひいてる!?」


「げ!」


橘の運転するバイクの車輪が、見事に自転車を踏み潰している。


路上に停めてあった自転車を引っ掛けて倒したあとに、思いっきりひいてしまったようだ。



「ぺ、ぺしゃんこだ!」


橘が叫んだ。



ピカピカのジャガーの自転車。


これは高そうだ。




「どうするのよ」


「ヤベー。このチャリ、俺の給料2ヵ月分かも」


気付くと、通りの向こうから、真っ青な顔をした若者が鋭い目つきでこちらを見つめていた。



橘は、数秒固まった後、

「逃げる!」

と言って、バイクを急発進させた。