バイクで行くと電車よりも大幅に早いので助かる。



距離はたいして離れていないのだが、うちから駅までが遠いので、歩くのに時間がかかってしまう。



「アネキの大学、あいかわらず立派だよなー」


大学の前の交差点で、信号待ちしながら橘が言う。


「橘、あんたも大学行きたいんじゃないの?」


「いずれ行くけど、今はお金を貯めるよ」


「っていうか、学費のことは良いとして、受験勉強しないと大学入れないの知ってる」


「え」


「予備校行ったり、参考書買ったり、入るまでも大変だよ」


「全然考えてなかった……」


「成績、あんまり良くないんでしょ?頑張らないと」


「ま、俺はやればできる子だから、なんとかなるっしょ」



信号が青に変わり、橘はバイクを発進させた。



が、すぐにまた減速し始めた。




「橘、どうしたの?」


「ん」


「あれ?」


「うん」


「やだっ。なんか、火事??」


「だったみたいだね」



大学の近くのゴミ屋敷が、すっかり焦げ屋敷になっている。



建物自体は、それほど燃えなかったようだが、家のまわりに積まれたゴミが、丸焦げになっている。




「ひでーな」


「あんなにゴミを積み上げてたら火事にもなるよね」


ゴミ屋敷は、焼け焦げたガラクタの撤去作業で、何人もの人が忙しそうに働いていた。


玄関の前で、ぽつんと座っている老婆が、このゴミ屋敷の主だろうか。



たまに真っ赤なスカーフを頭に巻いて近所でゴミを拾っていることから、赤頭巾ババアと呼ばれているそうだが、私は実物を見たことがなかった。


今日は緑色のベレー帽を被っている。