私と平田は、オード卵を連れて、山道を下った。

オード卵は、逃げ出さないように頭に布の袋が被せられ、騒がないようにさるぐつわがされている。

首と手首にロープが巻かれ、平田がそれを引っ張っている。


なかなか不気味な光景だ。

登山口から出たところで、ばったりとししゃもさんに会った。


空き缶をいっぱいに袋に詰めて、自転車を押している。


「ぐへっ!」

ししゃもさんは、驚いたように言った。


「こんにちは」


「ミチコお姉ちゃんかぁ。こんなところで何やってるんだぁ」


「いろいろあって……」


「そんな不気味なものひっぱっちゃって、おかしなミチコちゃんだなぁ」


「えへへ」


「まあ良いやぁ。今日は良い日だからなぁ」


「何か良いことあったんですか?」


「ひじきさんが良くなって、一緒に缶集めできるようになったんだぁ」


ひじきさん……

この間、ホームレス狩りにあって、火傷をして寝込んでいたホームレスだ。


「もう良くなったんですか?」


「ああ見えて、体力あるんだぁ」


「へえ!すごいですね!」

平田が言う。

さっきから、話に入りたくて必死の様子だった。


「嬉しいと言えば、よっちゃんイカも戻ってきたしなぁ」

ししゃもさんはご機嫌だった。


「ユニークな名前ですね!」

平田が言う。


「まぁ、変り者じゃあ」


「よっちゃんイカさんも、ホームレス狩りにあって怪我してたんですよね」

私は言った。


「そうだぁ。ひじきさんより重傷だったから、死ぬかと思って心配してたんだぁ」


「良かったですね」

私が言うと、ししゃもさんは、顔をくしゃくしゃにして笑顔を作った。


「じゃ、僕達、急ぎますんて!」


平田が言う。


「んだぁ。また遊びにこいなぁ」


ししゃもさんは、そう言うと、自転車を押して去っていった。